昆虫大学リポートその3(17日番外編)

一日目が無事に終わり、片付けと翌日の準備をしていた時のこと。
隣のブースで声があがりました。
オオゴマダラの羽化が始まりますよ!」

気温が低くて日中はなかなか羽化しなかったオオゴマダラが、ようやく沈黙を破ったようです。
そんなわけで、出展者やスタッフだけで観察会を行いました。


学芸員の解説つきで羽化が見られるなんてめったにないこと。
例によって写真がありませんが、落書きイラストとともに、福富さんの解説を(うろ覚えですが)メモしておこうと思います。
昆虫館での羽化動画も載せときますので、併せてどうぞ。


以下解説。
オオゴマダラの蛹は金属光沢をもった金色をしています。
例えば、水を張った桶にガラスのコップを入れると、角度によっては反射で鏡みたいに銀色に見えますね? 同じことが蛹にも起こっています。
蛹の殻と身体の間には水分があり、さらに殻は何層にもなっているため、どの角度から見ても鏡のように光を反射します。
殻は薄い黄色をしているため、反射の銀色と相まって金色に見えるのです」

「羽化直前になると、中の翅や体が透けて見えるようになります。これは、体が殻の中の水分を吸収するためです」

「この頃になると、チョウはどうやら殻の中から外を見ているようです。
ぼんやり影が見える程度のようですが、安全な時を見計らっているらしく、観察の隙をついて羽化することもしばしばです。」

「蛹の殻が割れて、頭が出てきました。殻が割れる位置は決まっています」

「つかまっている脚をよく見てください。4本しかありませんね。
このチョウの仲間は、前脚をたたんでいるため4本脚に見えます。
『昆虫の脚は6本』という固定観念があるので、チョウの絵を写生してもらうと、大人の方がよく間違えて描いてしまいます」

「チョウのストロー状の口は、実際には2本の細い棒からできています。羽化の様子を近くで観察すると、2本の棒がファスナーのように根元からくっついていくのが見えます」

「いま、お腹が出てきましたね。羽化が終わった個体と比べると、ずいぶんお腹が大きいのがわかりますか。
お腹には水分(体液)が詰まっています。ゆっくりお腹をポンプのように動かして、翅に体液を送っていくと、しわくちゃの翅が伸びていく仕組みです」

雨で寒かったため、この日の観察会は10分以上かかりましたが(時間測ってません…)、本来は数分で羽化してしまうそうです。
他の昆虫の羽化シーンも見たくなってしまいました。春になったら、蛹を探そうかと思います。


話題をもういっこ。
『昆虫大学』の出展者に、今をときめくバッタ研究者の前野さんがいます。
絶妙のタイミングで本を出版(本来は11月20日発売)したということで、開場前に私も一冊買ってサインをもらいました。
サバクトビバッタをこよなく愛し、勢い余ってアフリカのモーリタニアに移住し、ド変態っぷりをアピールするブログ『砂漠のリアルムシキング』で大人気を博す「バッタ博士」達と閉場後にダベっていたときのこと。
「70冊ぐらいサインしたら、字とイラストが上達した」とバッタ博士が仰るので、「じゃあハンコに彫りますから」と無理強いして巻末にその「上達したイラスト」を描いてもらいました。


たしかに夜の方がかわいい…。
   ←朝  夜→


約束どおりハンコにして翌朝渡したら、「早えよ!」と褒めてくださいました。
ついでに、バッタ博士自筆の「謹呈」もハンコに。
これはハカセうっかり売った本にまで「著者謹呈」と書いてしまった故事(?)に因んでいます。
夜中のテンションで作業してたため、ハンコ自体の写真を撮り忘れました。

サイズは「謹呈」が約3.5cm×2cm(原画と等倍)、バッタが約2.5cm×3.5cm(原画を50%縮小)。
18日にバッタ博士の本を購入してくださった方々には、このバッタはんこが押されていると思います。

余談。サバクトビバッタは、「孤独相」と呼ばれる時期は緑色をしていますが、一定条件下では「群生相」と呼ばれる黒いバッタになり、群れをつくります。
バッタ博士にハンコを渡したとき、深く考えずに緑色のインクを一緒にあげてしまいましたが、別に「どうせアフリカじゃ女の子と話せなくて孤独だろう」と嫌がらせをしたわけじゃないです。いやほんとほんと。うっかりしてただけですよ。ほんとだって。

モーリタニアイスラム教の戒律が厳しくて、全然女性と絡めないらしいです。


つづく